幕末を扱った本では、明治という新しい時代をつくった人たちが中心に描かれることが多いと思います。
勝海舟も、その一人です。
江戸城の無血開城に関わった人物として、教科書や歴史番組でもよく紹介されています。
一方、小栗忠順の名前は、勝ほど広く知られていないかもしれません。
小栗は幕府の勘定奉行などを務め、横須賀製鉄所の建設を進めました。
幕府が倒れたあとも使い続けられる施設や制度を残し、日本の近代化を支えた人物です。
同じ幕臣でありながら、小栗と勝が幕末の危機に向き合う方法は大きく異なっていました。
今回制作した電子書籍『幕臣・小栗忠順VS勝海舟』では、この二人を並べて描いています。
国を造る小栗忠順と、人を動かす勝海舟
小栗忠順が残そうとしたのは、造船所、産業、財政、軍事といった国の基盤でした。
本書では、小栗の仕事を日本近代化のハードウェアとして捉えています。
目の前にある製品だけではなく、それを造り、修理し、次の世代へ技術を伝える仕組みまで整えようとしたからです。
勝海舟は、人材を育て、組織をつくり、立場の違う相手と交渉しました。
江戸城開城では、内戦による被害を広げず、社会と人命を次の時代へつなぐ道を選びます。
こちらは、日本近代化のソフトウェアといえる働きでした。
ハードウェアだけでは、国は動きません。
ソフトウェアだけでも、未来は築けません。
設備や制度を造る人と、それを動かす人の両方がいて、社会は次の時代へ受け継がれていくのだと思います。
勝敗だけで人物を判断しない
歴史をあとから振り返ると、私たちは結果を知った状態で人物を評価できます。
勝った側の判断は正しく見え、負けた側の判断は間違っていたように見えることもあります。
しかし、当時を生きた人たちには、その先の結果は分かりませんでした。
限られた情報と時間の中で、何を守り、何を諦め、未来へ何を残すのかを決めなければなりません。
本書は、小栗を正義、勝を誤りとする本ではありません。
その逆でもありません。
二人が置かれていた立場や守ろうとしたものを見比べながら、それぞれの決断が持っていた意味を考えます。
これは、現在の仕事や組織にも通じる話だと思います。
対立する意見を勝ち負けだけで切り捨てず、双方の長所を意思決定に生かす。
そのためには、自分とは違う立場から物事を見ることも必要です。
100ページのカラー漫画と解説で描きました
本書では、各節の冒頭にカラー漫画を掲載しています。
漫画は全100ページです。
小栗と勝の表情、対立、迷い、決断を漫画で描き、そのあとに文章で時代背景や史実を解説します。
文章だけではつかみにくい幕末の状況を、まず漫画で感じてもらい、その意味を解説で深める構成にしました。
歴史上の出来事を単純な英雄物語にせず、史料で確認できる事実と後世に伝わった逸話も、できる限り分けて扱っています。
歴史を仕事の判断に生かしたい方へ
幕末や明治維新に関心がある方はもちろん、組織運営や人材育成に関わる方にも読んでいただきたい内容です。
限られた予算を設備に使うのか、人に使うのか。
目の前の危機へ対応しながら、将来に何を残すのか。
意見の違う相手と、どのように向き合うのか。
小栗と勝が直面した問題は、形を変えながら、現在の仕事の中にも現れます。
『幕臣・小栗忠順VS勝海舟』が、歴史の勝敗だけでは見えにくい二人の功績を知り、目の前の問題を少し広い視野で考えるきっかけになれば、うれしく思います。
書籍情報
– 書名:幕臣・小栗忠順VS勝海舟
– サブタイトル:対立を超えて日本の未来を築いた二つの国家構想
– 著者:Guri
– 形式:縦書きKindle電子書籍
– 内容:全100ページのカラー漫画と解説
